掛け軸の寸法は床の間と床からのバランスが重要!

掛け軸は季節ごとの絵柄が楽しめたり、縁起の良い絵柄や書を飾って励みにしたりなど、さまざまな鑑賞方法があります。訪問客の多い住宅や茶室のある屋敷では、おもてなしの役割も担います。 そんな掛け軸の印象を決める要素のひとつが、床の間とのバランスとなる寸法です。床の間の広さに合った掛け軸を選ぶことで、本来の役割を発揮します。 この記事では、床の間に最適なサイズを選べるよう、掛け軸の寸法や吊るすときのポイントを紹介します。

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掛け軸の寸法を調べる際に知っておきたい寸法の基準

掛け軸を選ぶときは、サイズ表記に注意しましょう。センチメートルなどメートル法ではなく、日本古来の尺貫法が使用されています。

まずは掛け軸で使用される寸法の単位や、パーツごとの基準となる寸法について押さえていきましょう。

掛け軸で使われる単位は「尺・寸・分・厘」

近代化にともなってメートル法が正式な法定単位とされていますが、伝統的な分野では、いまでも日本古来の寸法を使用しているところがあります。掛け軸においても昔ながらの尺貫法が残っており、1尺、1寸、などと数えるのが主流です。

寸法を測るときは通常の定規ではなく、尺貫法専用の定規を使用します。掛け軸で使われる単位を分かりやすくメートル法に変換すると、それぞれ以下のとおりです。

・1尺(10寸)=約30センチメートル

・1寸(10分)=約3センチメートル

・1分(10厘)=約3ミリメートル

・1厘=約0.3センチメートル

「約」がついている点から分かるように、1尺は完全に30センチメートルというわけではありません。根本的に異なる単位のため、センチメートルで表記すると多少の誤差が生じます。

販売されている掛け軸の寸法は、「尺五」や「尺八」など省略して書かれていることが一般的です。尺五は1尺5寸の略で、尺八は1尺8寸を表しています。

掛け軸のパーツごとの基準となる寸法

掛け軸の各パーツの寸法は、用意した裂地や絵柄部分の本紙のサイズなどによって多少変わりますが、以下の基準があります。

・一文字(いちもんじ):本紙の上下につけられた裂地

一文字は上下の合計が約2寸となるのが基準です。約6センチメートルの幅で、上下均等ではなく、上:下で2:1もしくは3:2の比率となるよう貼り付けます。

・中廻し(ちゅうまわし)の下:一文字の下につけられた裂地

中廻しは上下で裂地の幅が違うのが特徴です。下のほうが幅は狭く、一文字の上下を足した寸法となっています。

・中廻し(ちゅうまわし)の上:一文字の上につけられた裂地

上のほうの中廻しは、上側にある一文字の真上につけられており、ひと目で分かるほど、下の中廻しよりも幅が広く作られています。幅はちょうど下側の中廻しを2倍にした寸法です。

・地(ち):中廻しのさらに下にある裂地

中廻しの下のさらに下にある地は、重りの役目も持つ軸棒を巻き込んでいる広範囲の裂地です。掛け軸本体の中でも2番目に幅が広く、上下の中廻しを足した寸法となります。

・天(てん):中廻しのさらに上にある裂地

中廻しの上の、さらに上にある広範囲の裂地が天です。上部は表木や風帯が取り付けられています。最も幅が広く、地の寸法(中廻しの上下の合計)を2倍にした面積です。

・柱(はしら):本紙の左右にある裂地

掛け軸の種類によっては、中廻しの一部として含まれることもあります。中廻しの下と同じか、もしくは若干細い程度の寸法です。

・風帯(ふうたい):掛け軸の上部から垂れさがっている細長い裂地

風帯は柱や中廻しよりも細く作られており、掛軸全体の幅の25分の1程度が目安です。

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掛け軸の寸法は飾る場所とのバランスが重要

掛け軸は複数のサイズがあるため、選ぶときにどの大きさのものを掛けるべきか迷う人も多いのではないでしょうか。

掛け軸を選ぶときのポイントは、四方の寸法と飾る場所とのバランスです。大き過ぎれば窮屈に見え、小さすぎればバランスが悪く、見た目が悪くなってしまいます。

ここでは、掛け軸を選ぶ前に知っておきたい、飾る場所とのバランスの見方を紹介します。掛け軸を購入するときに役立つ、寸法の見方についても解説しているため、ぜひ活用してください。

まずは飾る場所と掛け軸のサイズを測る

まずは飾る場所と飾りたい掛け軸、それぞれのサイズを測りましょう。大振りの掛け軸を吊るしたほうが「豪華に見えるのでは」と、思いがちですが、床の間との調和で生まれる美しさが重要です。床の間の横幅に対して3分の1を目安に、適度なサイズの掛け軸を選んでください。

掛け軸は湿気や乾燥だけではなく、直射日光による焼けが生じないよう対策する必要があります。床の間に飾ったとき、掛け軸に直射日光が当たらないか事前にチェックしておきましょう。

また、床の間の横幅が一間か半間の違いによっても、飾る掛け軸は異なります。さらに、縦幅も重要で、たとえば床の間の下に棚や窓がある場合は、半間よりも短い掛け軸を選ぶと長さのバランスが取れます。

床の間の横幅や高さをもとに掛け軸を選ぶ目安は、以下のとおりです。

・一間…尺五立や尺八立(61×191センチメートルや71×194センチメートル)

・半間…半切立や尺巾立(51×181センチメートルや47×181センチメートル)

・下部に棚や窓がある…尺五横や尺八横(61×142センチメートルや71×136センチメートル)

※サイズ表記の詳細は次の項目で解説しています。

床の間の横幅は、一間で約180センチメートル、半間で約90センチメートルです。半間に掛け軸を飾るときは、一間より横幅も長さも短いものを選びます。

掛け軸の商品名を見れば、寸法が分かる

掛け軸を新しく購入するときは、商品名を参考に寸法を判断しましょう。掛け軸の商品名には尺五立や尺八横など寸法も記載されています。

寸法は絵柄の描かれている本紙と、裂地でできた本紙周囲の表具に分け、それぞれ表記されています。商品名に寸法が含まれるときは、主に本紙の寸法と絵柄の向き(立横)で書かれるケースが一般的です。

1.尺五立や尺八立など「立」がつく場合

たとえば前述のように一間ある床の間に飾る場合、掛け軸は尺五立や尺八立(61×191センチメートルや71×194センチメートル)と表記されたものを選びます。尺五立のうち、「尺五」は掛け軸のサイズを表し、「立」は向きを表しています。

尺五立や尺八立のサイズを詳述すると、尺五立は「一尺五寸ある縦長のタイプ」尺八立は「一尺八寸ある縦長のタイプ」です。

2.尺五横や尺八横など「横」がつく場合

横長の本紙で制作されている場合は、「立」ではなく横向きを表す「横」の文字が添えられ、尺五横や尺八横などと表記されます。尺五横や尺八横の場合は単純に縦長の掛け軸を横向きにしたような形状ではなく、61×142センチメートルや71×136センチメートルといった正方形に近い形状の掛け軸となります。

3.その他のサイズ表記

「立」「横」のほかに、「あんどん」と表記される掛け軸もあります。あんどんとは立と横の中間にあたる寸法で、縦の長さが「立」よりも短く、「横」よりも長いのが特徴です。このように掛け軸は商品名で寸法と向きが分かるようになっているため、最初に測った床の間の幅を参考に、サイズの基準を覚えておきましょう。

ちなみに先述した、半間に適切な掛け軸の例としてあげた半切立や尺巾立は、尺五より若干小さめのサイズです。半切立よりも尺巾立のほうが幅はわずかに短くなります。

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床からの高さは「本紙がきれいに見えるかどうか」

掛け軸をかけるときは、寸法に合わせて位置を調節できる自在という金具を使用することもあります。この点からも分かるように、掛け軸は床からの高さも重要なポイントです。

ただし、具体的に「尺八立はこの高さ」などと基準があるわけではなく、飾る人や見る人の感覚に合わせます。どの掛け軸を吊るすにしろ、重要なのは見る人にとって「本紙がきれいに見えるかどうか」です。

最後に、掛け軸の高さを決める2つのポイントを紹介します。

床の間に掛ける際は畳に座った状態できれいに見えるか

床の間に掛け軸を飾る目的のひとつは、来客時のおもてなしのためです。そのため掛け軸は立った状態よりも、畳に座った状態で見たときに美しいと感じる高さを理想としましょう。

極端に見上げるような高さはバランスも悪いため、避けるべきです。また、床の間に香炉や背の高い花を飾っている場合は、掛け軸に影ができないよう位置や高さを調節してください。

床の間以外に掛ける際は、生活様式に馴染む位置に掛ける

掛け軸は必ずしも床の間に飾らなくてはならない、というものでもありません。最近は生活様式の変化にともない、モダンなデザインの洋室にも気軽に掛け軸を飾れるようになりました。

床の間以外の場所に掛ける場合も、生活様式に馴染みつつ美しいと思える位置を心がけてください。ソファや椅子に座るのであれば、和室と同じく座った状態できれいに見える高さがおすすめです。

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まとめ

「高価な掛け軸を手に入れたので、襖や畳も一新したい」「床の間を掛け軸に相応しくしたい」など、和室や掛け軸に関する困りごとは、「金沢屋」へご相談ください。

金沢屋は、襖(ふすま)・障子・網戸・畳の張替えの専門店です。掛け軸の修繕や購入はもちろん、襖(ふすま)や障子、網戸や畳の張替えについても受け付けております。全国に300店舗構えており、どの地域でも対応可能です。

思い出の写真を使用したオリジナル掛け軸の制作も受け付けています。和室に関するお困りごとは、些細なことでもお気軽にご相談ください。