【修復費用の相場】掛け軸の修理費用と保管するポイント

美術品のひとつとして鑑賞される書画の掛け軸は、取り扱いによってしみや変色、折れなどの損傷が発生することがあります。所有している掛け軸に損傷があった場合、修復にどのくらいの費用がかかるのか、相場など気になっている方も多いのではないでしょうか。 この記事では、掛け軸の修復にかかる費用相場を、修復内容ごとに紹介します。大切な掛け軸を後世に残していくために、ぜひ参考にしてください。

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掛け軸の主な修復内容と費用の相場

掛け軸の修復にかかる費用は、サイズや傷み具合によって異なります。この項目では、金沢屋で依頼した際の費用相場を紹介していきます。

・しみ抜き:14,000円~

・折れやシワの修復:1箇所あたり 5,000円~

・変色の修復:要相談

・破れの修復:1箇所あたり 5,000円~

では、それぞれの詳細を解説していきます。

しみ抜き:14,000円~

掛け軸のしみ抜きには、水洗浄と薬品を使用した方法があります。

掛け軸は湿気に弱い性質があるため、湿気の多い部屋や場所ではしみが発生しやすくなります。また、日常の生活において、掛け軸に水がかかってしまうと、しみができてしまうケースもあります。

掛け軸にできたしみを放置すると、そこから劣化が進み、場合によっては作品に穴が空いてしまうおそれがあるため、早めの修復が必要です。

湿気や水によってしみになった場合は水洗浄を行いますが、水洗浄でも落ちないときは薬品を使用します。

ただし、薬品によるしみ抜きは、作品が傷んでしまうこともあるため、慎重な取り扱いが必要です。しみの状態に合わせて薬品を使い分けるなど、作品を保護しながら作業を進めていきます。

折れやシワの修復:5,000円~

掛け軸は和紙や絹、裂地(きれじ)、糊(きぬ)などが何層にも重ねられているため、折れやシワが発生しやすい特徴があります。

そのため、掛け軸を保管する際にキツく巻きすぎたり、掛ける際に落下させたりすると、その衝撃で折れやシワができてしまうこともあります。

折れやシワができてしまうと、見た目の印象が悪くなるだけでなく、作品が破れたり剥落したりするおそれがあります。しみ同様に早めの対処が肝心といえるでしょう。

折れやシワを修復するには、裏打紙をはがして本紙に水分を与えて再度裏打ちを行います。折れやシワの状態がひどい場合は、裏側から折れた部分に和紙をあて、プレス機で修復することもあります。

変色の修復:要相談

変色の修復相場は掛け軸の状態によって異なります。修復をする際に着色を行うので、一度ものを見てからの判断となります。変色の修復を依頼する際は、一度業者に相談しましょう。

掛け軸の変色は、自然な風合いの変化は時代の流れや情緒を感じさせてくれるため、無理に色を戻す必要はありませんが、鑑賞も難しいほどの変色や汚れなどは修復することをおすすめします。

変色や汚れを落とす方法としては、薬品を使用してクリーニングを行います。ただし、しみ抜きと同様に薬品によって作品が傷まないように慎重な作業が必要です。

破れの修復:5,000円~

取り扱いには十分な注意を払っていても、物が当たってしまうことや、強い力で引っ張ってしまうことで、掛け軸が破れてしまう場合もあります。また、掛け軸の経年劣化や保管方法に問題があり、破れてしまうこともあるでしょう。

破れた掛け軸は、裏から紙を当てて補修を行います。しかし、破れの程度が大きく損傷が激しいときは、分解や表装のやり直しなどをして修復していきます。

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掛け軸修理の流れ

掛け軸の修理や修復は、以下の流れで進めていきます。

1.作品の状態の確認

まずは作品を写真に撮り、気付いた点などをメモに取るなどして作品の状態を記録します。損傷の度合いや作品の構造などを調べるために、赤外線やX線などを用いる場合もあります。

作品の状態は、これまでの保管状況や修復歴などによって異なるため、調査した内容をもとに作品の状態を見極めて、最適な作業内容を組み立てることが重要です。

2.切り抜き

作業内容が決まったら、掛け軸から本紙を切り出していきます。

3.表面の修理

切り抜きが終わったら、作品に傷をつけないように注意しながら、表面についたゴミや汚れなどを除去していきます。

その後、作品に悪影響を与えない膠(にかわ)などを用いてにじみ止めの処置を行い、水洗浄を行います。湿気や水によって発生したしみは、水洗浄によって除去することが可能です。ただし、しみの状況によっては薬品を使用することもあります。

4.裏面の修理

表面の修理が終わったら、旧裏打紙をはがして、破れた箇所や穴が空いている部分の補修を行っていきます。

旧裏打紙をはがす作業は、修理工程の中でも最も集中する作業のひとつです。作品を傷つけないように、慎重に作業を進めていきます。

破れや穴を補修したら、新しい紙で裏打ちを行い、裏面の修理は完了です。

5.仕立て

修理工程が完了したら、最後に仕立てを行います。

プレス機などで作品をフラットな状態にして歪みをなくし、作品のイメージに合った裂地を使用して掛軸装へ仕立てます。

その後、作品を保存するための保存箱を作成したら、すべての作業は完了です。

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掛け軸を長く保管するためのポイント

掛け軸はちょっとしたことでも傷みやすいものです。ここでは、掛け軸を長く保管するために気を付けるポイントについて紹介していきます。

日の当たらない風通しの良い場所に保管する

掛け軸は和紙や絹などを素材としているため、日光に当たると変色しやすい性質をもっています。そのため、日焼けによる変色を防ぐために、同じ掛け軸を長期間掛けたままにするのは避けた方が無難です。

また、湿度の高いところではカビやしみが発生する怖れがあるため、掛け軸は風通しの良い部屋に飾りましょう。たとえば、部屋の湿度が高くなりそうなときは、晴れた日に窓を開けて換気をすることをおすすめします。または、エアコンのドライ機能や除湿機などを使用して調整するなど、工夫が必要です。

掛け軸を保管する際も、湿気がこもらない場所を選ぶことが大切です。保管場所は、温度20〜30℃、湿度50〜60%を保てる環境が適切といわれています。住宅の中であれば、直射日光が当たらず、湿気がこもらない部屋の押し入れなどが良いでしょう。

そのほかにも、湿気やホコリから掛け軸を守るためには、掛け軸を桐箱(きりばこ)に入れた保管方法が適しています。

ただし、押し入れに長期間入れたままにしていると劣化を早めてしまうため、年に数回は虫干しを行いましょう。※虫干しとは、良く晴れた日に、直射日光を避けて吊るして干す作業です。

定期的に虫干しすることで状態を確認できるため、掛け軸の劣化や損傷にも気付きやすくなります。

傷や汚れを見つけたら専門店へ

掛け軸に傷や汚れ、折れなどを見つけたとき、自分で直そうとすると状態が悪化することがあります。

掛け軸に傷や汚れ、折れなどを見つけたら、自分で手を加えたり放置したりせず、早めに専門業者に修復を依頼しましょう。状態が悪化する前に修復できれば、費用も抑えられます。

掛け軸は和紙や絹などの素材が何層にも重なっているため、作品を保護しながら修復するためには専門の知識と技術が必要です。

また、シミや変色などは、複数の要因が関係している場合があるため、使用する薬品の見極めも大切になってきます。

掛け軸の修復なら、金沢屋へおまかせください。金沢屋は和室のさまざまなお困りごとを解決する地域密着型の専門店です。

しみ・汚れ・折れ・破れ・虫食いなど損傷が激しい状態もご相談ください。全国300店舗、どの地域でも対応可能です。まずは、お気軽にお問い合わせください。

また、和室のことなら、畳や襖、障子の張り替えなど、何でもご相談ください。「ちょっと気になるんだけど」「これって修理が必要なの?」といった疑問や不安などにも担当のスタッフが丁寧にお答えいたします。

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まとめ

今回は掛け軸を修復する際の費用相場と修復内容について解説してきました。和室に趣を与えてくれる掛け軸は、適切な修復を行うことで後世に残すことが可能です。

掛け軸は、保管方法に気を付けることで劣化や破損などを防げます。ぜひ、参考にしてください。