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戸襖とは和室と洋室を仕切る引き戸
戸襖とは、片方のお部屋が和室、もう片方が洋室(リビング)の場合に使われる引き戸のことです。近年では、洋室と和室が共存する構造も増え、戸襖が使われる機会も多くなっています。
和室側には襖紙、洋室側には化粧板やクロスなどを貼り、それぞれのお部屋の雰囲気に合わせて作られます。
雰囲気を壊さないため、引手もそれぞれに適したものを選ぶのが一般的です。たとえば、和室側は丸型、リビング(洋室)側は細い長方形などがあります。
戸襖と本襖(和襖)の違い
本襖と戸襖は、使用目的が大きく異なります。前者が押入や和室同士の仕切りで用いられるのに対し、後者は先述したように和室と洋室(リビングなど)を仕切るための襖です。
また、構造の点から見ても、大きく異なります。本襖の骨組みは、格子状です。骨組みの上に和紙を、さらにその上に襖紙を貼ります。下地が板ではなく、仕上げ材も紙だけなので、非常に軽量で小さな力で開閉できます。
一方、戸襖の下地はベニヤ板です。ベニヤ板の上から、それぞれの仕上げ材を貼り付けます。外枠(縁)の固定には、釘などは使わず、ボンドを使用するのが一般的です。本襖と厚さを比べると、約1cmの差があります。
また、実際に持ってみると本襖は重さをあまり感じないのに対し、戸襖は重量感があって重いです。
ただし、戸襖を押し入れに使用する地域もありますので、なかなか見た目では区別できない場合もあります。
見た目で判断しにくいケースでは、襖の面を押して感触を確かめてみましょう。戸襖は下地にベニヤ板が使われているため、押すと硬いです。本襖は紙だけで仕上げられているため、戸襖より柔らかく押す場所によって沈み方が変わってきます。
感触を確かめるために力を入れて押し込み過ぎると損傷させてしまう場合もありますので、扱いには注意しましょう。
戸襖の張り替えに必要な道具と費用
戸襖の張り替えには次のような道具が必要です。いずれもホームセンターなどで揃う道具ですので、事前に準備をしておきましょう。
・鉛筆
・作業台
・カッターナイフ
・糊(専用のもの)
・パレットやバット(専用糊を溶かすための容器)
・ハケ(糊を貼り付けるためのもの)
・ヘラ(空気を押し出すときに使用)
・ペンチ
・マイナスドライバー
・ベニヤ板(コンパネ)
・新しい襖紙やクロス
道具単体で購入する方法のほか、壁張り替えセットなど、道具一式が販売されているケースもありますので探してみるのがおすすめです。
自分で戸襖の張り替えを行う場合の費用感は、張り替える襖紙の値段で大きく変わってきます。種類によって数千円から数万円と幅があるためです。一般的によく使われる戸襖を使用すると、戸襖4枚の場合20,000円前後で見ておきましょう。
戸襖を張り替える際の基礎知識
戸襖にもともと張ってあった古い襖紙をはがして張り替える場合もありますが、張り替えといっても上張りするのが基本です。古い襖紙はそのままに、新しい襖紙を上から貼っていきます。
古い襖紙が薄い色の場合はそのまま貼っても色が浮き出てこないので、何もはさまずに新しい襖紙を重ね張りしても問題ありません。
しかし、古い襖紙の色が濃い場合は、そのまま上張りすると色が浮き出てしまいます。全面または、色が濃い場所に部分的に茶ちり紙を貼ってから新しい襖紙を上張りしていくのが基本です。
また、手順自体は襖紙を貼るのと変わりませんが、襖紙の代用としてクロス壁紙を貼る方法もあります。戸襖張り替えの基礎知識として押さえておきましょう。
戸襖の張り替え手順
戸襖張り替えの基礎知識として新しい襖紙の上張りについて説明しましたが、実際に自分で張り替えを行う場合、どのような手順で進めていくと良いのでしょうか。戸襖張り替えの7つのステップを順に説明していきます。
1. 縁に番号を書いて戸襖を外す
複数の襖を張り替えるときは注意が必要です。襖をもとの位置に戻す際に、同じ場所におさまっていないと締まりの不具合や動きのスムーズさ、引手位置が逆になり使いづらいなどの弊害が出てきます。
そこで外す前に、マスキングテープを貼り番号を記入しましょう。縁に直に鉛筆で書くより、建具の損傷を防げるためおすすめです。その後に、戸襖を外してください。
2.引き手を外す
次に、引き手を外していきます。糊留めされている場合は、マイナスドライバーやミニバールなどを使って外していきましょう。木でできている引き手は壊れやすいため、慎重な取り扱いが必要です。
また、新しい引き手のサイズは合っているか、引き手を外した段階で実際にはめ込んでみて確認しておきましょう。
3.【必要な場合】茶ちり紙を貼る
基礎知識でも説明したように、古い襖紙が全体的に濃い色であったり、一部に濃い柄が入っていたりするときは、茶ちり紙を貼っていきます。
濃い箇所に部分的に貼るやり方もありますが、襖より一回り小さくカットして全面に貼ると仕上がりは綺麗です。
ただし、古い襖紙が濃い色であっても、新しく貼る襖紙が厚い素材でできていて色が浮き出てこないようであれば、茶ちり紙を貼る必要はありません。
4.【必要な場合】襖紙を剥がす
周囲の縁より厚みが出ている場合などは、必要に応じて古くなった襖紙を剥がすことをおすすめします。
古い襖紙は、専用の住宅洗剤を全体に染み込ませて剥がしていきます。その際、周囲が濡れてしまいますので、シートなどの上に置いてから剥がしていきましょう。古い襖紙の色が変わるまで洗剤をなじませるのが、きれいに剥がすポイントです。
5. 作業台の上で新しい襖紙を切る
とくに不慣れな人は、作業台の上で襖紙を切ることをおすすめします。クーラーボックスなどの上にベニヤ板やコンパネ材を置くことで、作業台の代わりになります。
作業台の上に新しい襖紙を置き、その上に戸襖をのせてください。外枠(縁)に沿って鉛筆でなぞればカットする場所がわかります。カットするときは、5~10ミリ程度外側をカッターナイフでカットしましょう。
6.新しい襖紙を貼る
新しい襖紙に、ハケを使って糊をまんべんなく塗ってください。周囲の端に濃い糊を3㎝ほど塗ります。それ以外には薄い糊を使いましょう。
その後、襖に張っていきます。作業はふたりで行うことをおすすめします。まずは上から中心にかけて張ります。次に中心から外側に向けてハケを動かし、空気を抜きながら張り付けましょう。
空気が入ったら、ヘラで押し出します。張り終わったら、完全に乾燥するまで待ってください。乾燥したのちに、はみ出た襖紙をカッターで切っていきます。
カットが終わったら、余った襖紙の切れ端を使って隅を押さえこんでいきましょう。内側をゆっくりこするようにして爪で押さえると、襖紙の剥がれ落ちを防止できます。
早くこすってしまうと摩擦でやけどしてしまう可能性があるため、注意しましょう。
7.引き手を取り付ける
新しい襖紙への張り替えが終わったら、最後に新しい引き手を付けていきます。まずは、引き手がくる部分の襖紙を八つ切りにしてくり抜きましょう。
糊留めの場合は、木工用ボンドなど接着剤を引き手の裏に塗ってはめ込んでいきます。引き手部分の糊が完全に乾いて固定されたら完成です。完全に乾いていない状態で動かすと接着できないため、乾かしてから行いましょう。
戸襖を張り替えるときの注意点
ここでは、張り替える際の注意点を紹介していきます。
戸襖の緑(ぶち)は無理に外そうとしない
襖の縁には襖の強度を高めたり、襖紙のデザインを引き立てたりする役割があります。本襖の場合は縁を取り外すことが可能ですが、戸襖はボンドなどで接着しています。そのため、無理に外そうとすると、縁の部分の木が割れたり、見た目も悪くなったりしてしまいます。
最悪、縁が割れたことにより戸襖全体に支障が出る場合もありますので注意が必要です。
張り替える際は、本襖なのか戸襖なのかを確認しましょう。
縁周辺の襖紙は丁寧に切る
戸襖の襖紙を張り替える際は、緑を外さずに行います。そのため切り口に歪みがあると、目立ちます。見た目が悪くなってしまうので、定規を使ったり、ヘラを定規代わりにしたり工夫が必要です。
劣化状態によっては新調も検討する
戸襖は、ベニヤ板の上に襖紙やクロスが張り付けられています。そのため、張り替える際も上から張り替えるだけです。しかし、ベニヤ板も経年劣化などで、徐々に傷んでいきます。
たとえば、経年劣化や地震などによって本体の形が歪んでしまうと、襖がスムーズに動かなくなることも。その他には、強い衝撃が加わることで突き抜けるような穴が開いたり、内側の格子に大きなダメージを受けたりすることもあるでしょう。
そうなると、状態によっては張り替えや補修より、戸襖そのものを新調したほうが安くなる場合もあります。
自宅や予算に合った襖を探す際は、ぜひ襖の専門家である金沢屋に相談してください。
金沢屋であれば、ライフスタイルやご予算などに合わせて、さまざまな家を見てきたプロの職人が、最適なプランを提案します。経年劣化がひどい場合は、ホームセンターにはない多くの種類の襖紙から選ぶことが可能です。
また、全国で300店舗以上展開しております。襖はもちろん、和室のことであれば何でも弊社にご相談ください。
まとめ
戸襖は本襖と異なり、縁を外すことができません。そのため、破れなどがなければ、そのまま上から張り替えを行います。作業は手間がかかりますが、手順を踏めば自分でもできるので、この記事を参考にしてチャレンジしてみてください。
ただし、中に入っているベニヤ板に経年劣化が見られる場合など、その状態によっては襖そのものを交換したほうがいい場合もあります。
その場合は、専門業者に見てもらったほうがいいでしょう。