襖の張り替えは一人でもできる!
一人で襖の張り替えをするのは大がかりとなり、「難しそう…」と感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、襖の構造や襖紙の種類を知っておけば一人でも張り替えることはできます。
まずは、襖や襖紙について確認していきましょう。
襖を張り替えるタイミング
襖は使っているうちに、表面の襖紙が劣化していきます。寿命は10年前後ですが、汚れやシミが目立ってきたら、年数にかかわらず張り替えどきです。そのままにしておくと、カビが繁殖するおそれがあります。
何かの拍子で襖紙が破れたときも、速やかに張り替えるのがおすすめです。破れの範囲が広がると、中の芯材まで影響をおよぼし、襖ごと交換する破目になります。
部屋の雰囲気を変えたいときも、これまでと趣向の異なる襖紙に張り替えれば簡単です。
襖の種類
襖には、いくつかの種類があり、それぞれに構造が異なります。
・本襖(ほんふすま)…古くから日本で使われている襖です。中小骨という木材の骨組みが芯材となっており、その両側に和紙を下張りして、表面に襖紙を張っています。
・戸襖(とぶすま)…木の組子にベニヤ板を張って芯材にしている襖です。重みがあり、洋室と和室を仕切りたいときに使われます。
・チップボール襖…本襖の下張りにチップボールという厚紙を使っているのが特徴です。本襖よりも耐久性や調湿性が優れています。
・段ボール襖…その名のとおり、段ボールが芯材です。両側にアルミ箔を張って下張りをしてから、表面に襖紙を張っています。安価で軽いため、主に賃貸アパートで使われる襖です。
・発泡スチロール襖…発泡スチロールが芯材に使われています。それ以外の構造や使われ方は段ボール襖と同じです。
襖紙の種類
襖紙にもいくつかの種類があります。素材と張り方を紹介していきます。
襖紙には、ランクがあり、「鳥の子>上新鳥の子>新鳥の子」の順になります。いずれも機械による製造です。それぞれの特徴を解説していきます。
和紙の襖紙
「鳥の子」と呼ばれており、素材や製造方法によって4つのランクに分かれています。もっともランクが高いのは、職人が手すきしている「本鳥の子」です。
織物の襖紙
糸の種類や織り方によって、高級・中級・普及と3つのランクに分かれています。和紙よりも丈夫で、柄が立体的なのが特徴です。
最近はビニール製の襖紙も増えており、水回りなど湿気の多いところで使われています。
張り方は、糊を襖紙に塗って張るのが基本ですが、すでに糊が塗られていたり、接着面があったりする襖紙なら簡単です。
アイロン貼りタイプ
アイロンの熱で粘着剤を溶かして襖に張ります。表面が平らな襖が向いており、中小骨で凹凸のある本襖へ張るにはコツが必要です。
発泡スチロール襖は、アイロンの熱で芯材が溶けるおそれがあるので使えません。ビニールの襖紙が張られている襖もNGです。
再湿のりタイプ
切手と同じ要領で、糊が塗られた面を水で濡らして張ります。大量の水を使うので、水に弱い段ボール襖や発泡スチロール襖には向いていません。
シールタイプ
裏紙を外してシールのように張れます。ほかの方法よりも張るのは簡単ですが、本襖は中小骨で凹凸があるため、アイロン張りタイプと同様、張り替えにはコツが必要です。
襖の張り替えにかかる費用の目安
襖を張り替えるにはDIYと、専門業者へ依頼する方法があります。どちらを選ぶかによって、費用が大きく異なります。
襖の張り替えにかかる費用は、以下の記事でも詳しく解説しています。張り替えを依頼する業者の選び方も紹介しているので、あわせて参考にしてみてください。
「襖(ふすま)の張り替え費用は?種類別張り替え費用と業者選びのポイント」
DIYで襖を張り替えた場合
DIYで襖を張り替える場合は、材料費だけで済みます。襖紙4枚入りのセットで2,000~3,000円程度が目安です。
張り替えに必要な襖紙や引き手はホームセンターで購入できます。市販されている襖紙はアイロン張りタイプ、再湿のりタイプ、シールタイプの3種類です。高級和紙の「本鳥の子」や上級織物は職人の手作業で作られているので、市販されていません。
襖紙1枚の単価の比較は次のとおりです。紙の種類やデザインによっても、価格が異なります。
・アイロン張りタイプ 1,000円~
・再湿のりタイプ 700円~
・シールタイプ 1,600円~
専門業者に依頼した場合
リフォームやハウスメンテナンスの専門業者に襖の張り替えを依頼する場合は、一般的に、片面で3,000~4,000円程度の費用がかかります。襖の両面を張り替えるなら、1枚あたり5,000~1万円程度の費用が目安になります。
業者に依頼する場合は、襖紙の種類によっても費用が大きく異なります。高級な襖紙の場合は片面で1万8,000~2万5,000円程度、両面では4万~5万円の費用が必要です。
襖本体の不具合も修理してもらう場合は、損傷の程度によって費用にプラスされます。張り替え費用は業者ごとに異なるので、見積もりを取って比較しましょう。
DIYで襖を張り替える前に施工方法を確認する
DIYで張り替える場合は、襖紙のタイプや施工方法をしっかり確認しましょう。襖紙のタイプによっては、作業の仕方が大きく異なります。襖紙を購入するときは、家庭での張り替え作業のしやすさを重視して選びましょう。
DIYでプロ並みの仕上がりを目指すなら、再湿のりタイプがおすすめです。水でのりを溶かしながら貼っていくので、失敗も少ないでしょう。アイロン張りタイプは外枠を外さなくても張り替えられるので、初心者でも比較的簡単に作業できます。
襖本体が水や熱に弱い場合もあり、選べる襖紙は限られます。襖紙のタイプをしっかり見極めて、DIYがしやすいものを選んでください。
DIYで襖を張り替える方法
襖や襖紙の種類が分かったところで、具体的な襖を張り替える方法を紹介していきます。
襖の種類を見極める
まずは、襖の種類を確認します。表面を触って組み木のような凹凸が感じられれば、本襖かチップボール襖、板の存在を感じられて重みがあれば板襖、軽ければ段ボール襖か発泡スチロール襖です。それでも分からなければ、引き手を外すと襖の内部を確認できます。
襖の枠は、本襖かチップボール襖でないと外せません。それ以外の襖は、枠をつけたまま張り替えることになります。
既存の襖紙の状態を確認する
張り替えるときは、既存の襖紙の上に新しい襖紙を張るのが基本です。ただし、すでに何回か重ね張りをして、襖紙の厚みが枠をはみ出しそうであれば、一番下の襖紙を残して剥がしたほうが良いでしょう。
段ボール襖や発泡スチロール襖は、既存の襖紙を剥がせないので、厚みの限界を超えているなら、襖ごとの交換となります。
準備するもの
襖の張り替えで用意するのは、以下のとおりです。
・襖紙
・糊(すでに糊や接着剤がついている襖紙であれば不要です)
・糊を入れる容器(同上)
・茶チリ紙や補修用の紙(下地になります)
・はさみ(襖紙や補修用の紙をカットするときに使います)
・カッター(襖紙をカットするときに使います)
・かなづち(釘を打つときに使います)
・ラジオペンチ(釘を抜くときに使います)
・バール(引き手を外すときに使います)
・刷毛(糊を襖紙に塗るとき使います)
・マスキングシールやビニールシート(枠や床を養生するために使います)
張り替えの手順
続いて、糊を使って本襖を張り替えるときの手順を見てみましょう。
引き手を外す
釘打ちされていなければ、バールで浮かすだけで外せるでしょう。釘打ちされているなら、バールで浮かせて釘の頭を出した後、ラジオペンチで引き抜くと外せます。
枠を外す
枠と襖の隙間にバールを差し込み、ハンマーで叩きながら隙間を広げます。ある程度、隙間が広がったら、手で枠を持ち、少しずつ襖から引き抜きましょう。同じ要領でほかの枠も外していきます。
もし、枠に釘の頭が見当たらなくて、スライド式で固定されているなら、枠の先端を叩いてずらしましょう。直接ハンマーで叩くと枠が傷むおそれがあるので、枠とハンマーの間に木やベニヤ板を敷いて、その上から叩くのがおすすめです。
枠を外すときは、あらかじめマスキングテープを使って印をつけておくと、あとの作業が楽になります。襖紙を貼ったあとは印に従って枠を戻せば良いので、キレイに仕上がるでしょう。
糊を用意する
糊は、指定されている水の量で薄めておきます。4倍の水で薄めるのが一般的です。それとは別に、半量の水で薄めた濃い糊を用意しておくと、補修紙や襖紙の縁をしっかりと張れます。
そのまま襖紙を張っても良いのですが、破れているところがあるなら、先に補修しておきましょう。破れよりもひと回り大きく補修紙をカットし、水で湿らせたら糊を塗って張ります。このとき、補修紙の縁を手でちぎっておけば、周りとなじみやすくなるでしょう。
さらに、その上から茶チリ紙などの下紙を張ると、襖紙を張ったときの仕上がりがキレイです。
襖紙を張り付ける
ここまで準備ができたら、いよいよ襖紙を張ります。まずは襖紙の巻き癖を、逆方向に巻いて直しましょう。次に襖の上に広げて、カットする位置を決めます。
このとき、襖紙を襖の厚みの分だけ片側に寄せてから、反対側を辺に沿ってカットすると、襖の厚みの半分を覆うことができ、仕上がりがキレイです。
カットしたら、襖に張りつける面に、刷毛を使って糊を塗りましょう。先ほど2種類の糊を作っているのであれば、全面に薄い糊を塗り、縁に濃い糊を塗ります。襖に張ったら、手のひらで中に入った空気を外側に押し出して抜きましょう。空気が抜けたら、厚みのところまでしっかりと張ります。四隅で余った分は、カットしましょう。
このままでは引き手の位置が分からないので、手で触りながら探して目印をつけておきます。乾燥させたら、先ほどとは逆の手順で枠を取りつけ、次に引き手の取りつけです。目印をつけておいたところに切り込みを入れて、引き手をはめこみ、必要であれば釘を打ち付けましょう。
なお、襖紙は糊が乾燥すると縮むため、片面だけ張り替えると襖が歪むおそれがあります。この方法で張り替えるなら、両面を同時に行うのがおすすめです。乾燥させたら枠を取りつけずに裏返して、補修から始めましょう。
枠を取り付ける
襖紙を張り替えたら、取り外した枠を戻します。あらかじめつけておいたマスキングテープの印にあわせて、左右の枠から取り付けてください。
スライド式の枠は、釘の位置と穴を合わせても良いでしょう。位置が決まったら枠を下部から上に向かってハンマーで叩いて、しっかりはめ込むのがポイントです。
続いて、上下の枠をはめ、釘を打ち込みます。釘穴が広がっている場合は、釘を打つ位置をずらしましょう。
引手を取り付ける
最後に、引き手を取り付ければ張り替え作業が完了します。まず、引き手の形にあわせてカッターで切り込みを入れて、襖紙を押し込んで引き手をはめ込む形を作りましょう。
四角形の引き手の場合は、対角線に×の形に切り込みを入れます。丸形は、外周から中心に向かって細かく切り込みを入れるのが、キレイに形を整えるポイントです。
釘を使わない引き手は、押し込んだ襖紙に接着剤を塗り、しっかり押し込んではめ込みましょう。釘を使うタイプでは、引き手釘打ちを使って固定してください。
襖の張り替えを失敗しないためのコツ
最後に、襖の張り替えを失敗しないためのコツを紹介します。
初心者にはアイロンタイプやシールタイプがおすすめ
糊で襖紙を張るのは、多くの手間がかかり、道具も揃えなければいけません。キレイに仕上げるにはテクニックも必要です。初心者はアイロンで張るタイプか、シールタイプの襖紙を使うと、キレイに張れるでしょう。
自力での張り替えが難しいときは業者に依頼
襖を専門に取り扱っている業者に依頼すると、キレイに張り替えてくれます。重い本襖や戸襖を持ち運ぶ負担もありません。また、襖そのものが傷んでいたり、歪んでいたりするときは新調するという選択肢もあります。
金沢屋では、襖の張り替えはもちろん、新調も可能です。張り替えは扉サイズ(縦180センチメートル×横90センチメートル)で2,750円、新調は22,000円(どちらも税込)から承っております。豊富な経験と実績を持つ職人が作業を行うので安心です。
襖の張り替えをお考えの際は、ぜひご相談ください。
まとめ
襖には本襖や戸襖などがあり、中の芯材や構造が異なります。襖紙は糊で張るタイプのほかに、アイロンやシールタイプがあり、初心者でも張り替えが簡単です。業者に依頼すると、襖に合った方法でキレイに張り替えてくれるでしょう。