掛け軸の飾り方を、基本知識とともにご紹介

床の間を飾る掛け軸は、通年使用できる絵柄もあれば、季節や用途で掛け替えるものもあります。縁起の良いお気に入りの絵柄を、年中飾るのもひとつの方法ですが、長期間同じ掛け軸を使用し続けると、傷みが出てしまいます。 どのような掛け軸を飾るか迷ったときは、季節ごとの絵柄を楽しむ方法がおすすめです。この記事では、掛け軸を正しく飾るために知っておきたい、吊るし方や注意点について紹介します。

この記事は約6分で読み終わります。

掛け軸を飾る前に行う準備と知っておきたい知識

掛け軸は床の間を飾り、訪問客をもてなす大事な要素のひとつでもあります。別の掛け軸に掛け替えるときは、次のシーズンでも楽しめるように正しい方法で収納しましょう。

また、掛け替えるほうの新しい掛け軸も、床の間に合ったものを選び、飾るときは傷めたり汚したりしないように注意が必要です。

掛け軸を正しく飾るために、まずは準備と知っておきたい知識について解説します。

まずは飾る床の間と掛け軸のサイズを測る

掛け軸を美しく見せるには、床の間との調和も意識しなくてはなりません。季節に合った絵柄ならどんな掛け軸でも良いというわけではなく、床の間に合ったサイズのものを用意しましょう。

まずは、床の間に最適な掛け軸を選ぶために、床の間と掛け軸それぞれのサイズを測ります。目安としては、床の間の横幅に対して3分の1程度の掛け軸を選ぶと美しく見えます。

床の間は180cmほどある6尺の一間(いっけん)や、90cm前後ある半間(はんげん)などが挙げられます。一間の場合は一般的な掛け軸のほか、幅広のものも最適です。掛け軸特有の名称でいえば、尺五立や尺八立にあたります。

半間に飾る場合は細めの半切立や尺巾立といった、書の掛け軸に多いサイズが最適です。床の間の下に棚や窓があるなど長い掛け軸が吊るしにくい場所には、短めの尺五横または尺八横あたりを選ぶと良いでしょう。

また、実際に掛け軸を吊るすときは、劣化を防ぐために直射日光が当たらないか注意が必要です。掛け軸の前や脇に置いた花の影が、本紙(絵柄のある部分)に重ならないよう気を付けるのもポイントです。

掛け軸を触る際は汚さないように注意を

掛け軸は床の間の装飾品であると同時に、美術品でもあります。掛け軸を汚さないように、触るときは事前に手洗いを行いましょう。

掛け軸の主な素材は紙や布のため、一度汚れがつくと染み込んでしまい、簡単には除去できません。手汗をかきやすい人は、直接触れずに袱紗(ふくさ)の使用がおすすめです。手汗をかいた状態など濡れた手で触ると、掛け軸にカビが生える原因となるため注意しましょう。

目次へ

掛け軸を掛ける手順

掛け軸を掛けるときも、破損や汚損を起こさないよう十分に注意しましょう。ただ広げて掛けるのではなく、傷めないための持ち方と手順で丁寧に行います。

ここでは、掛け軸を掛ける手順について、巻緒のほどき方と掛け軸の吊るし方に分けて、解説します。

巻緒をほどく手順

掛け軸を収納していた桐箱から出したら、まずは巻緒をほどきます。巻緒とは巻いた掛け軸が広がらないようにする留め具の役割を担う紐で、作品に合わせた色や柄のものが使用されているのが特徴です。

巻緒をほどくときは、掛け軸を持つ手は動かさず、巻緒を動かしてほどくようにしましょう。具体的な手順は、以下のとおりです。

1. 掛け軸を下から支えるように片手で持つ

まず利き手とは逆の手で掛け軸本体を持ちます。掛け軸の端ではなく、巻紐があるあたりを下から支えるように持つと落としません。

2. 巻紐の端をゆっくりと引いてほどく

結び目からはみ出ている巻紐の端を、ゆっくりと引いてほどきます。

3. 巻紐のほうを動かしてほどき、紙巻も外す

掛け軸を支える手は動かさず、巻紐を動かして本体に巻き付けている部分もほどきましょう。最後までほどき終えたら、掛け軸の保護に使用していた細長い巻紙も外します。

掛け軸を掛ける手順

巻緒をほどき、巻紙も外したら、以下の手順で金具に掛け軸を吊るします。

1.畳の上に一度置き、掛け軸を吊るす準備をする

掛け軸を吊るす前に、一度畳の上に置いて準備をしましょう。たとえば、ほどいた巻緒は中央にあると吊るすときに邪魔になることや、光の当たり方によっては裏から透けて見えることもあるため、掛緒の端へ寄せておきましょう。掛け軸を飾る床の間のデザインに合わせて、下座側に寄せておくと無難です。

畳の上に置いたあとは、表木に沿わせて折られていた風帯をのばし、折り跡をとりましょう。掛け軸を吊るす準備をする間は、掛け軸を完全に開かず、一文字(本紙の上部に貼り付けられた細長い裂地)が見えるあたりまでに留めることがポイントです。残りは巻いたままで準備をすると、万が一の事故で重要な絵柄部分が破損してしまうリスクを軽減できます。

2.自在と矢筈を使って吊るす

掛け軸を吊るす金具は、「二重折釘」など壁に打ち付けられたタイプと、高さを変えられる「自在」の2種類があります。自在を使用するときは、あらかじめ掛け軸のサイズに合った高さへ調節しておいてください。

矢筈の先端に掛紐の中央を引っかけ、破損させないよう慎重に掛け軸を金具へ吊るします。矢筈を持っていないほうの手で掛け軸本体を持ち、吊るしている途中で広がらないようにしっかりと支えましょう。

3.掛け軸を広げ、垂らし下ろす

掛け軸の下部にあたる軸木の両端(軸先)を持ち、本体の残っている部分をゆっくりと垂らし下ろしていきます。破損の原因となるため、途中で手を離さず、最後まで支えながら垂らしてください。

目次へ

掛け軸を長持ちさせるコツとは

掛け軸は季節や用途に合わせて掛け替えることで、何年も繰り返し活用できるものです。ただし適切ではない使い方をすると、早期に傷んでしまう可能性があります。

大切な掛け軸を長持ちさせるためには、収納時の保管方法だけではなく、吊るしたときの使い方も注意しましょう。最後に、掛け軸を長持ちさせるための重要なコツを2つ紹介します。

同じ掛け軸をずっと掛けたままにしない

フクロウなど、掛け軸の中には季節問わず掛けられる縁起の良い絵柄もあります。しかし長持ちさせるためには、「いつでも使える絵柄だから」と掛けっぱなしにすることはおすすめできません。

ホコリで汚れるだけではなく、日光による焼け、乾燥による折れなどが生じるおそれがあります。掛け軸は、カビなどを生じさせる湿気が苦手な一方で、折れの原因となる乾燥も苦手です。長持ちさせるためには、長期間の使用を避け、2~3ヶ月ほど掛けたらしばらく休ませるようにしましょう。

掛け軸を飾るのであれば、4本は準備しましょう

同じ掛け軸を長期間使用せずに済むよう、複数本を用意しておくと便利です。最低限、4本は準備しておくと困りません。

一度に4本揃えるのではなく、先に2本購入して半年ごとに掛け替えることから始めてみてはいかがでしょうか。3本目は慶事、4本目に仏事の掛け軸を購入するとひととおり揃います。

ちなみに掛け軸を購入する人の多くは、季節に合わせて掛け軸の掛け替えを楽しんでいます。

和室の些細なお困りごと、なんでもご相談ください

掛け軸の吊るし方に失敗して、うっかり破損させてしまったという方や、新しい掛け軸の購入を検討したいという方は、ぜひ「金沢屋」へご相談ください。全国に300店舗あるため、どの地域でも対応できます。

金沢屋は、襖(ふすま)・障子・網戸・畳の張替えの専門店です。一方で、掛け軸の修繕や新調も受け付けており、虫食いや汚れ、破れなどがあっても状態によっては対応できる場合があります。

掛け軸をはじめ、和室の困りごとをならなんでも幅広く受け付けています。ぜひ、金沢屋にお任せください。

目次へ

まとめ

お気に入りの掛け軸を長持ちさせるためには、長期間使用しないことも重要です。2~3ヶ月を目途に一度収納して、日光や乾燥から守りましょう。季節ごとの絵柄で複数本の掛け軸を用意しておくと、ひとつの絵柄を長期間掛け続けることを避けられます。

掛け軸を新調したい、床の間のある部屋の畳を張り替えたいなど、和室に関する困りごとは、ぜひ金沢屋へ相談ください。