目次
掛け軸の種類
掛け軸の歴史は古く、飛鳥時代に中国から伝わってきたといわれています。仏教や茶道の発達とともに普及し、一般家庭でも格を上げるインテリアアイテムとして活用されてきました。
ここでは、掛け軸の種類を紹介していきます。洋風建築の住宅が増え、飾る機会が少なくなっていますが、ぜひ和の美について見直してみてください。
床掛け
掛け軸のなかでも一般的なのが、和室の床の間に飾る床掛けです。描かれた内容によって、次の3種類があります。
・書
・絵
・書と絵を組み合わせたもの
床の間は和室のなかで一段高くなっていて、上座です。床の間は神が宿る場所とされており、掛け軸を掛けることで運気が上がるともいわれています。
とくに茶道では、床の間に掛ける掛け軸も茶道具のひとつとして重要視されているため、床掛けにはぜひ良いものを選んでください。
床掛けの場合は、ご自宅の床の間にあうサイズの掛け軸を選びましょう。床の間の横幅の3分の1を占める掛け軸が最もバランスが良く、美しいとされています。
一般的な掛け軸は、高さ約190センチメートル×幅約54.センチメートルの「尺五」と呼ばれるものです。そのほかに、尺五を基準に幅が小さい「尺三」、幅広の「尺八」もあります。
仏壇の掛け軸
仏壇を祀るために飾る、仏像が描かれている掛け軸もあります。
これは仏像を置く代わりとして用いられることが多く、必ず本尊と両脇侍の3本1組で揃える必要があります。
仏壇を飾る掛け軸は、家の宗派にあわせて選ぶことが大切です。仏壇を購入する際に一緒に購入すれば、サイズあわせをする手間がかからず、ぴったりのものを選べるでしょう。
掛け軸の用途に合わせた選び方
お部屋の床の間に飾る掛け軸は、用途や使うシーンにあわせて選ぶことが大切です。ここでは、シーンごとの掛け軸の選び方を紹介します。
普段使いをする
掛け軸を普段使いにする場合は、スタンダードな花鳥画や山水画をモチーフにしたものがおすすめです。あまり季節感を面に出していないものなら、一年中飾れて便利です。
一年中飾れるものとしては、虎や龍、七福神などの縁起の良いものも好まれます。床の間をかざる掛け軸の最初の一本にも、ぜひ活用してください。
季節に合わせる
掛け軸を季節にあわせて掛け替えるなら、季節の花や鳥が描かれている花鳥画やその季節の風景画を選ぶと良いでしょう。
掛け軸は、描かれているもので季節感を表現できます。次のようなモチーフに注目して、春夏秋冬に合わせて掛け軸を選んでください。
・春・・・桃、梅、ウグイス
・夏・・・朝顔、アジサイ、金魚
・秋・・・紅葉、柿、落ち葉
・冬・・・南天、椿、雪景色 など
桃の節句や端午の節句にあわせて、節句掛けを選ぶのも選択肢のひとつです。桃の節句であればお雛様や桃、端午の節句であれば兜や鯉のモチーフを選ぶと、和室が華やかになります。
季節や行事ごとに掛け替え、日々の生活の中にゆとりや四季の移ろいを感じることができるのも、掛け軸の魅力でしょう。
お祝いごとに合わせる
正月や結婚などのお祝いごとには、祝儀掛けと呼ばれる掛け軸がうってつけです。
祝儀掛けには、鶴亀や松竹梅、高砂などのおめでたい絵が描かれているのが一般的です。子どもが生まれたときには立身出世を願う鯉の滝登りの絵でお祝いするなど、シーンにふさわしいものを選びましょう。
縁起を担ぐ
掛け軸は、描かれたモチーフの縁起を担ぐといった使い方もできます。
たとえば、雄々しい虎や竜、滝を登る鯉の姿が描かれた動物画は、その力強さから魔除けにもなるといわれていて、子どもの成長であったり、昇っていく図柄なら昇進や選挙当選であったりなどを願う意味でも重用されています。季節感がない縁起物なので、普段使いにしても良いでしょう。
山水画のなかでも富士山は、幸運を呼び込む縁起が良い図柄として好まれます。船や川が描かれている掛け軸は世渡り上手になる願いが込められていて、縁起の良い掛け軸は新築祝いなどの贈り物にも活用できます。
神事や仏事に合わせる
ご家庭の神事や仏事にあわせて掛け軸を選ぶことも大切です。
神事があるときに床の間に飾るなら神事掛けが、お盆やお彼岸、法要などの仏事には仏事掛けがおすすめです。一般的に神事画には、天照皇大神や七福神、天神様などの神様が描かれています。
仏事掛けには蓮や仏様が描かれていることが多く、仏像の代わりとして取り扱われることもあります。法要のときに、十三佛を描いた仏事掛けを選ぶと、宗派の教えに深く帰依することを示し、世の中の救済を広く願えます。
掛け軸の取り扱い方
掛け軸は芸術性が高く、美術品や骨董品としての性質も持つため、取り扱いには注意が必要です。
ここでは、掛け軸の扱い方を詳しく紹介します。ダメージを防いで、大事な掛け軸を長く愛用しましょう。
掛けるときの取り扱い方
掛け軸は巻緒・掛緒・風帯・軸先の4つで構成され、軸先に錘となる風鎮をぶら下げて飾ります。雑に扱うと破損するリスクがあるため、矢筈を使って、丁寧に飾りましょう。
掛け軸のかけ方の手順は、次のとおりです。
1. 平らな場所で、巻いてある掛け軸を書画の上の部分が見える程度に広げる
2. 掛け緒に矢筈を掛けて、反対の手で掛け軸を支えながら持ち上げる
3. 床の間の金具に掛け緒を掛け、静かに矢筈を外す
4. 掛け軸を手で巻き広げながら、ゆっくりと下まで広げる
5. バランスを調整し、軸先に風鎮を取り付ける
しまうときの取り扱い方
掛け軸をしまうときに、ただ巻くだけではNGです。掛け軸のしまい方にも作法があり、それを怠ると劣化の原因になるため気をつけてください。
掛け軸をしまう手順は、次のとおりです。
1. 掛け軸は床の間にかけたままの状態でほこりを落とし、風鎮を外して軽く巻き上げる
2. 矢筈に掛け緒を掛けてはずし、巻いた部分を支えながらおろす
3. 平らな場所で掛け軸を広げて風帯を左右に折り、巻紙を巻きつけて、掛け軸を最後まで巻く
4. 巻緒をくぐらせながら軸本体に巻き付け、紐を締める
5. 巻き終わった掛け軸は包み紙でくるみ、桐箱にしまう"
お手入れするときの取り扱い方
掛け軸は床の間に掛けっぱなしにするのではなく、定期的なお手入れと掛け替えが必要です。
お掃除には、柔らかい羽根ばたきを使うことが大切です。掛け軸用の羽根ばたきは柄が長く、軸の上部にも届くので、ぜひ活用してください。
長期間掛ける場合でも、2~3ヶ月を目安にいったん床の間から外し、箱に片付けて休ませると長持ちします。箱にしまうときは必ず防虫香を入れ、虫食いを防ぎましょう。
掛け軸を新調するならプロに相談
大事にしていた掛け軸が傷んでしまったら、 金沢屋にご相談ください。
掛け軸はデリケートで、扱い方を間違うと劣化が早まり、破れてしまいます。掛け軸の傷みは修繕して、美しい姿を取り戻しましょう。
金沢屋では掛け軸の修繕のほか、新調も行っています。オリジナルの掛け軸が欲しいとき、自分で描いた書や絵を掛け軸にしたい方も、ぜひご用命ください。
金沢屋は全国約300店舗で展開しており、日本全国どこでもすぐに駆け付けて対処が可能です。掛け軸だけではなく、畳や襖、障子といった和室のことならなんでもご相談ください。
まとめ
日本古来の掛け軸には、さまざまな種類があります。かける場所や用途に応じて掛け替えができるため、ぜひその美しさにも目を向けてください。
とはいえ、掛け軸は繊細な美術品です。傷んでいないか定期的に確認し、修繕や新調をしながら長く愛用しましょう。